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官民共創に成功している企業は何をしたのだろうか?―株式会社アイエスイー 代表取締役 高橋 完 氏インタビュー【前編】

2024年01月09日

官民共創に成功している企業は何をしたのだろうか?―株式会社アイエスイー 代表取締役 高橋 完 氏インタビュー【前編】

あらゆる地域課題に「現場の声」を聞きながらつきそい、loTでの解決を目指す、三重県伊勢市の株式会社アイエスイー(以下、「アイエスイー社」)は、電子機器の設計・開発のノウハウを活かして「獣害IoT事業」「海洋IoT事業」など、地域課題解決のための取り組みを行っています。 この記事では、「官民共創に成功している民間企業は何をしているのだろうか」というテーマで行ったインタビューの様子をお届けします。これまで同社が全国各地の地域と共創した事例や、地域課題をクリアするまでのプロセスについて詳しく伺いました。

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目次

SOLUTION農山漁村に横たわる地域課題をIoTで解決

ーーまずはアイエスイー社の詳しい事業内容をお聞かせください。

高橋氏:当社は1985年の創業から電子機器の設計や開発、販売を行っています。『うみだす・つくる・うる・つきそう そのすべてがつながり 「だったらいいな」をカタチにする』を経営理念にしており、お客様と同じ目線で課題を見つめ、その解決に繋がるものづくりをしてきました。近年では特に、社会課題解決に注目しています。

社会課題を解決する製品の第一弾は、2011年に販売を開始した「獣捕獲システム」です。これはIoTを活用したワナのことで、イノシシやシカ、サルなどの獣害対策に有効です。現在では全国各地で5000台以上が稼働しています。

ICTやIoTの技術は、水産業、林業、農業、河川等のモニタリングなどにも活用できます。これまで培ったノウハウを活かし、漁業・養殖業の課題解決のための「海洋IoT事業」や地域課題解決のための「地域IoT事業」など幅を広げています。

獣害IoT事業の様子(出典:アイエスイー社Webサイト

 

ーー現在、複数の自治体と連携してさまざまな事業を展開されていると思うのですが、各地域にはどのような課題がありますか?

高橋氏:例えば獣害対策の面では、捕獲の際の見回りの負担軽減が挙げられます。獣のワナを仕掛ければ当然、捕獲できたかどうかを1箇所ずつ見回る必要があるのですが、ワナの数が多かったり広範囲だったりすると非常に大変です。

漁業・養殖業の現場では、高齢化や後継者の不在による人手不足が深刻です。そのため水温などを観測して回るのにも、非常に労力がかかります。また、気候変動の影響で海水の状態が目視や勘では予測しづらくなってきました。養殖業の品質向上を考えると、効率的で定量的なモニタリングが必要になります。

その他にも、雨が続く時期に古いため池が決壊しないよう見張る必要があったり、林業の現場では、労働災害時の早期救助体制を確立する必要があったりと、農山漁村にはさまざまな課題があります。

これらに対し、ICT・IoTを活用して人の負担を軽減したり、危険を回避できるような仕組みを作ろうと取り組んでいます。

 

 

CO-CREATION産官学連携による研究開発と実証実験

ーーこれまでの官民共創の取り組み事例について、詳しく教えてください。

高橋氏:獣害対策に用いるIoT捕獲システムは、兵庫県立大学、鳥羽商船高等専門学校、三重県農業研究所と研究開発コンソーシアムを立ち上げ、農林水産省の研究開発プロジェクトにて開発しています。開発した装置やシステムは積極的に実証実験を行い、フィードバックと改良を続けてきました。その結果、全国各地に実証実験の場ができ、導入数も増えていきました。

漁業・養殖業におけるIoT活用(海洋IoT事業)では、海洋モニタリングシステム「うみログ」を開発しました。こちらも研究機関や大学・高等専門学校と連携して開発や実証実験を行っています。連携先は、鳥羽商船高等専門学校、三重県工業研究所、三重県水産研究所です。この事業は2020年度 「地域・企業共生型ビジネス導入創業促進事業補助金」に採択されました。

海洋IoT事業の様子(出典:アイエスイー社Webサイト)

 

ーー産官学がうまく連携しているのですね。それぞれのシステムでは、具体的にどのようなことができるのですか?

高橋氏:IoT捕獲システムには、映像を見ながら遠隔で捕獲できるタイプや、ワナにセンサーを付けて自動的に捕獲できるタイプなどがあります。一定以上の大きさの親の個体だけをセンサーに反応させて捕獲するなど、生物保護の観点からワナをコントロールすることも可能です。

ワナの見回りの負担軽減には、長距離無線を使います。ワナが作動したら手元の携帯端末に通知が来るようになっているため、見回りの効率を上げることができます。

海洋モニタリングシステム「うみログ」では、センサーやカメラを使って30分ごとに海水温や水圧、塩分濃度、溶存酸素量、現場の画像などを自動測定し、サーバーに情報を送る仕組みを採用しています。漁業関係者のみなさんは専用のアプリからその情報を見ることができるため、手動で観測をしに行かなくても済みます。

 

ーーこれは喜ばれるシステムですね。開発するに当たり、意識していることはありますか?

高橋氏:「自分たちも課題を体験する」ことです。そうでなければ、本当に必要とされる機能が見えてきません。そのため当社では、全員が「わな猟免許」を取得し、実際にイノシシやシカの捕獲を行っています。私たちはものづくり企業ですが、「機械」そのものよりも「機械の活用」の体験に努めています。

 

 

NEXT STAGE成功例を応用し、さらなる地域課題へアプローチ

ーー今後も地域課題に寄り添った製品開発が進みそうですね。

高橋氏:「うみログ」を応用した、ため池監視システム「いけログ」の実証実験が各地で始まっています。豪雨や大雨時の氾濫予防や対策に役立つシステムになるよう、これからも改良を続けます。

また、林業の分野でも開発が進んでいます。携帯電話の電波が圏外の現場で労働災害が起きた時に、速やかに救助情報を送信するシステムです。こちらも実証実験が直近に迫っており、来年度には正式リリースができるのではないかと思っています。

 

ーー素晴らしい取り組みをご紹介いただきありがとうございます。後編のインタビューでは、髙橋社長から見た「行政との関わり方のポイント」について伺っていきます。