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官民共創に成功している企業は何をしたのだろうか?―株式会社アイエスイー 代表取締役 高橋 完 氏インタビュー【後編】

2024年01月09日

官民共創に成功している企業は何をしたのだろうか?―株式会社アイエスイー 代表取締役 高橋 完 氏インタビュー【後編】

あらゆる地域課題に「現場の声」を聞きながらつきそい、loTでの解決を目指す、三重県伊勢市の株式会社アイエスイー(以下、「アイエスイー社」)は、電子機器の設計・開発のノウハウを活かして「獣害IoT事業」「海洋IoT事業」など、地域課題解決のための取り組みを行っています。 この記事では、「官民共創に成功している民間企業は何をしているのだろうか」というテーマで行ったインタビューの後編をお届けします。前編では、「全国各地の地域と共創した事例」や「地域課題をクリアするまでのプロセス」をお話しいただきました。後編では、自治体を始めとした官民共創のステークホルダーとの関わり方や、コミュニケーションから得られた気付きを中心に伺います。

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目次

RESEARCH徹底したリサーチが社会課題解決型事業のアイデアを生む

ーー前回のインタビューでは、アイエスイー社の「地域課題に寄り添った製品開発」のエピソードが印象的でした。事業に関するアイデアがほしいとき、高橋社長は何を参考にしていますか?

高橋氏:農林水産省の「林業白書」や「水産白書」には目を通しています。そこには社会課題がたくさん載っているからです。各省のホームページもチェックしますね。

最近では林業の従事者の高齢化や後継者不足が叫ばれています。そのような課題を見ながら、「当社の技術を活用したら何ができるだろう」とか、「当社の得意分野を活かせるマーケットはどこか?」などと日々考えています。

 

ーーデスクトップリサーチを習慣にしているのですね。その他、関係者との会話からヒントを得ることもありますか?

高橋氏:そういう場合も多いです。例えば当社には、「いけログ」という製品があります。これは、ため池の水位を観測して危険水位時にLINEで通知したり、カメラでため池の状況をリアルタイムに監視できるシステムです。

「いけログ」が本格的に事業化できると手応えを感じたのは、知り合いの会社の方から「池について困っている場所があるが、試験的に何かできないか」という声でした。ちょうど転用できそうな製品がありましたから、一度試してみましょうという話になったのです。実証実験を行いつつ、全国のため池に関する課題をリサーチしたところ、「これは事業化しやすい」という手応えを感じました。

「うみログ」の技術を「いけログ」へ転用(出典:アイエスイー社Webサイト

 

ーー自社のアイデアやリソースを違う分野に転用していく際には、人とのコミュニケーションがやはり必要ですね。

高橋氏:「世の中が何を必要としているのか」「競合は何をしているのか」という調査はデスクトップリサーチだけでもある程度はできると思います。ただし、製品が普及するかどうかの判断については、直接情報収集をした上で行います。せっかく開発するなら「収益化できる前提」で進めたいですから。自治体の窓口に電話をしてヒアリングすることもあります。

 

ーー自治体の窓口に電話をして、どのようなことをヒアリングするのですか?

高橋氏:該当する課に「地域の課題」について問い合わせをします。すると、大体教えてくれることの方が多いです。人海戦術にはなりますが、一旦はさまざまな情報を自治体からヒアリングしようと、社員が皆で電話をしています。

 

ーー最初から「売り込み」をすると嫌がられますが、「課題」をベースにすると会話が進むのですね。

 

GIVE最初は全てのリソースを「貸す」つもりで取り組む

ーーアイエスイー社は、これまで全国各地で実証実験を行い獣害対策に用いるIoT捕獲システムなどを開発してきました。高橋社長から見て、社会課題解決型の事業開発におけるポイントは何だと思いますか?

高橋氏:例えば、経済産業省の「地域・企業共生型ビジネス導入創業促進事業」のような国の研究事業に参画すると、自治体とのつながりを作りやすくなります。国からは補助金が出ますから、事業開発の追い風にもなります。

それから、自治体のみならず、研究機関などとも連携すると事業開発が進んでいくように思います。自治体は地域課題の解決が目的ですし、研究機関は研究成果を出すのが目的です。我々は事業化が目的になります。このように、お互いWin-Winになれる関係性が築けるとスムーズです。まずは研究機関とタイアップして、そこから自治体と連携するという順番になることもあります。

私は事業開発とは実証実験も含めてのものだと思っているので、最初は「研究」と表現して自治体に説明します。すると、連携がうまくいくことが多いです。ただし、実証実験に我々民間のリソースを可能な限り提供できる姿勢を示すことが重要です。自治体の皆さんが実証実験に参加するのはなかなか大変ですから。そういう関わり方をしていくと、自治体や研究機関とは良い関係性が築けます。

 

ーーということは、最初は企業側が負担するコストが大きいかもしれないけれど、後々返ってくるという考え方なのですね?

高橋氏:そうですね、最初は全てのリソースを貸すつもりでスタートします。そのやり方が最も早く普及すると感じます。当社の「IoT捕獲システム」も、最初は全国各地で実証実験をさせていただくところから始まりました。そうやって複数の自治体での活用事例が出れば、他の自治体の方も安心するでしょう。

とはいえ、自治体だったらどこでも連携したい、というわけではありません。地域課題を本気で解決しようと主体的に取り組む地域や、熱量の高い行政職員の方たちとタッグを組みたいと思っています。

 

ーー高橋社長から見て、共創しやすい自治体の特徴は何だと思いますか?

高橋氏:いくつかあります。まず「担当者が異動しない前提でプロジェクトが進められること」です。異動があると蓄積してきた情報がまっさらになるので、製品を実際に使っていただく集落の皆さんとのつながりも薄くなってしまいます。

それから、「担当者が現場へ足繁く通えること」も重要だと思います。「何か困っていることはありませんか?」と直接尋ね回ることで、新しい課題が見つかるからです。私たちももちろんですが、自治体の担当者の方も、実証実験の最後まで現場に足を運んで見届けることが大切だと思います。

もう一つは、スピード感です。例えば私たちが「こんな実証実験をしたい」と提案したときに、「それならあの場所があります」と素早く動ける自治体は共創がしやすいです。これができるのは、日頃から住民の方たちとコミュニケーションが取れているからだと思います。先に挙げた「担当者がしっかりと現場に行く」ことにもつながってきます。

 

DRIVING FORCE官民の間を取り持つコンサルタントの存在も事業の推進力に

ーー官民共創には複数のステークホルダーが存在します。近年では官と民の間を取り持つコンサルタントの存在も目立つようになってきました。さまざまな立場の方と関わりながら事業開発を進める中で、大きな気づきを得ることもあったのではないでしょうか?

高橋氏:私も従業員も、学びになることがたくさんあります。単純に事業を進めるだけでなく、人材育成の面で官民共創から得られるものは多いです。

獣害対策の事業に関しては、当社もコンサルタントに伴走していただいています。そんな中、最近大きな気づきを得ました。我々は当初、獣害対策の商品を「畑にフェンスを活用して農作物を守ろう」とストレートな表現で訴求していましたが、コンサルタントの方からは「農作物を守るのは農家だけではない、国が推進する”人と獣の境界線づくり”の文脈で訴求をした方が良いのでは?」とアドバイスをいただきました。大きな視点で物事を捉えることの大切さに気づき、非常に衝撃を覚えました。

このように、さまざまな人が関わる分、得られるヒントや学びも大きくなるのが官民共創だと思います。

 

ーー素晴らしいお話を聞かせていただきありがとうございました。

 

 

終わりに

「官民共創に成功している民間企業は何をしているのだろうか」というテーマで、アイエスイー社の高橋代表取締役からお話を伺いました。

社会課題へのアンテナの張り巡らせ方、マーケティングリサーチ、自治体へのアプローチ方法など、官民共創のヒントがたくさん散りばめられたインタビューとなりました。

社会課題解決型の新規事業開発を行う民間事業者の方は、ぜひ参考にしていただければと思います。