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高校生のアイデアを官民共創で実現!―高校生やドライバー視点に立った斬新な交通安全対策の取り組みー【前編】

2023年12月19日

高校生のアイデアを官民共創で実現!―高校生やドライバー視点に立った斬新な交通安全対策の取り組みー【前編】

2023年5月、大阪府枚方市内に斬新なデザインのラッピングバスが誕生しました。大阪府立牧野高等学校の学生と枚方市、そしてイーデザイン損害保険株式会社の三者が連携した交通安全啓発プロジェクトの成果です。 この三者が立場や距離を越えて協力し、ひとつのプロジェクトを推進できたのには理由があります。前後半に分けて、そのプロセスや関係者同士の関わり方をご紹介します。

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目次

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CO-CREATION官民共創で生み出された斬新な啓発ポスター、横断幕のデザイン

今回のプロジェクトは、大阪府枚方市が「信号のない横断歩道における交通ルールを周知するには?」というテーマでアイデア募集を市内企業や学校等に行ったのに対し、枚方市に校舎を構える大阪府立牧野高校の学生が、独自の交通安全対策の提案をしたのが始まりです。ここに、「事故のない世界をお客様と共創する」を理念とするイーデザイン損害保険株式会社が合流したことで三者の連携・共創が実現したのです。

そのプロセスは後編記事で詳しくご紹介するとして、まずは「プロジェクトの成果」から見ていきましょう。

枚方市の伏見市長やイーデザイン損害保険といった関係者を交えて行われた成果報告会(2023年5月実施)では、牧野高校生が企画立案した交通安全対策のプレゼンテーションや、交通安全啓発ポスター等のデザインが発表されました。

 

特に注目を集めたのが、啓発ポスターや横断幕の独創的なデザインアイデアです。これらは高校生の斬新な発想から生まれたもので、大変目を引くものでした。「行政が単独では発想することも作ることができなかった」と、出席した市長やイーデザイン損害保険といった関係者からも高い評価を得ました。YouTube画面やインスタグラムなどのSNSを意識した画面構成、強調したい事柄を「#」で表現したり、「w」というネット独自の表現の活用、オリジナルの手書きイラストなどは、確かに行政が企画しても決裁は通らなかったかもしれません。

 

※牧野高校の生徒によるデザイン

 

また、「取り組みの成果」を数値化して検証したことも印象的です。昨今重視されるEBPM(Evidence Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)の流れを高校生が主体となって作ったことにも注目が集まりました。

横断歩道を渡る際に、「手を上げる」というシンプルな自動車運転者に対するシグナルが効果があるのではないかという仮説を立て、その仮説を検証するために実際に牧野高校の生徒や学校関係者が協力して横断歩道などで試してみました。その結果、「手をあげた」場合は横断歩道でストップする自動車が40ポイント以上増えたとのことです。その結果を横断幕や啓発ポスターに掲載したのです。

特筆するべきは、その横断幕や啓発ポスターを見て、どのくらい効果があったのだろうかと再度検証を行なっていることです。時期は違うので一概にはいえませんが、できるだけ同じ条件でもう一度調査したところ、半年間で1.3倍のストップ率となったということです。啓発ポスターの企画制作だけではなく、その成果を検証することを通じて、枚方市における交通安全対策を前に進めたのでした。

 

※ポスター等による啓発活動の成果を検証

 

 

OUTCOMEポスターのデザインをラッピングバスにし、啓発活動は更なる広がりへ

高校生たちがデザインした最も目を引くポスターのデザインは、京阪バス株式会社の協力のもと車体のラッピング広告になりました。成果報告会の日には続けてバスの出発式も開催され、枚方市内への巡回がスタート。

ラッピング広告は後方の車などからの視認性が特に高く、このバスが市内を巡回することで、多くの方の目に触れることとなります。

もともとの課題であった「信号のない横断歩道における交通ルールを周知するには?」に対して、ドライバーへの啓発という形で応えるものとなりました。

 

INTERVIEWイーデザイン損保の寄付によりプロジェクトが前進

本プロジェクト推進の背景は、イーデザイン損害保険株式会社による枚方市への寄付金の提供があります。ここからは、寄付に至った経緯を同社のCX推進部片桐さんに伺います。

 

共創企業

イーデザイン
損害保険株式会社

CX推進部:片桐さん

Q1.枚方市との共創の背景と目的は?

今回、枚方市の皆さまと共創させていただいた背景には、官民共創マッチングプラットフォーム「逆プロポ」の存在があります。

当社は「事故のない世界をお客様と共創する」の理念のもと、かねてからCSR活動を推進してきました。しかし単に寄付をするだけでは、そのお金が誰の何に役立っているのか不明瞭なままです。近年は当社の損害保険に加入するお客様からも「自分の納めている保険料がどこに行くのか分からない」という声が上がっており、事故時以外でも価値の感じられる損害保険会社のあり方を探っていました。

そこで生まれたアイデアが「交通安全を推進する自治体の活動の支援」です。地域の交通安全について課題を抱える自治体に寄付という形で支援を行い、その取り組みを推進してもらおうというものです。

しかし、一つの大きな壁がありました。自治体とどのように関係構築をすれば良いのか?最初の糸口が掴めなかったのです。

どこかに突破口はないものかと模索していたところ、「逆プロポ」に行きつきました。自治体と企業がフラットな関係で課題感を持ち寄りマッチングができるとのことで、この度の公募に至りました。私たちが掲げた課題(テーマ)は「より安全な交通環境・社会の実現」です。

今回の公募は昨年に引き続き2回目になります。

 

Q2.どのような観点から枚方市の提案を選んだのか

複数の自治体から企画のご応募をいただいた中で、当社の従業員投票によって枚方市様の提案を選定しました。選定するに至ったポイントは3つあります。

ひとつ目は、「信号のない交差点の一時停止率を向上する」という目的です。これは当社が目指す「事故のない世界」に通ずるものがあります。従業員からも「応援したい」との声がたくさん上がり、大きな共感を呼んでいました。

二つ目は、まちの未来を担う高校生が発案した取り組みであるという点です。自分たちでまちの交通課題についてリサーチし、仮説と具体的な解決策まで考えているところに可能性を感じました。

三つ目は、今後の取り組みの広がりという観点です。当社では、道路上の危険箇所を発見しマップ上で可視化する「もしかもマップ」というWebサービスを提供しています。このサービスを絡めた協業の可能性も今後は考えられると思いました。そうすれば、寄付だけにとどまらないさらなる社会貢献ができます。

このような理由から、枚方市様の提案を選定しました。

 

Q3.今回の共創で得られたものは?

※関係者での記念撮影(参加者全員で手をあげるポーズ)

デスクリサーチでは決して分からない「現場の生のデータ」を得られることです。今回の例で言えば、高校生たちが現地調査した「信号のない横断歩道での車のストップ率」がそれに当たります。

「歩行者が手を挙げなければ、信号のない横断歩道では約8割の車がそのまま通過する」という結果には、驚愕を覚えました。これはプロジェクトに関わらなければ知ることができなかったデータです。

その他、当社のエンドユーザーと重なる方たちの「交通安全に対するリアルな声」が聞けたことも大きな収穫です。住民の皆さんとつながりの深い自治体と共創することで、リアリティのある課題にどんどん触れることができます。お客様が抱えている課題の解像度を上げることは、企業活動の中で最も重要な取り組みのひとつではないでしょうか。それが叶うのが自治体との共創だと実感しました。

貴重な情報をいただいた代わりに、当社からは、交通安全に関する知見提供を行いました。交通事故はどういう条件が重なると起こりやすいのか?どうしたら防げるのか?など、損害保険会社として培ってきた情報を高校生たちに伝え、啓発活動に活かしていただきました。

主体的にプロジェクトを推進する高校生たちと、道筋を整えてくださる枚方市の皆さん、そして活動を支援をする我々と、良いフォーメーションで進められた取り組みでした。

 

TO BE CONTINUED【後編】では成果までのプロセスをお届けします

『高校生のアイデアを官民共創で実現!―高校生やドライバー視点に立った斬新な交通安全対策の取り組みー【前編】』をお届けしました。

後編では、「行政・学校・民間企業と立場の違う関係者同士がプロジェクトをどう進めたのか?」というプロセスに注目します。

官民共創には組織文化の違いやマネジメント人材の不在、ミスコミュニケーションなど様々な壁が存在しますが、本プロジェクトはそれを乗り越え発展を見せました。過程には、どのような関わり方があったのでしょうか。後編をお楽しみください。

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