
2023年11月28日
高齢化に悩む竹山団地と神奈川大学サッカー部による地域再生の挑戦(前編)
横浜市緑区にある竹山団地。高齢化率が50%に近いこの団地で、地域と神奈川大学サッカー部、神奈川県住宅供給公社が手を取り合った「官民共創」による地域再生の挑戦、「竹山プロジェクト」が注目を集めています。神奈川大学サッカー部部員59名が、エレベーターのない竹山団地で空き家がちだった4、5階を寮として住み込み、地域活動を通して住民と交流しながら、地に足の付いたリーダーシップを身に着けていく取り組みです。
神奈川大学サッカー部は、竹山連合自治会などと共に「健康・つながり・まちづくり」をかかげ、多世代交流と地域の健康づくりを目指しています。
部員の食堂も兼ねたカフェ、介護予防教室、料理教室の運営に加え、スマホ教室や小学生の宿題応援団などを行う交流スペースを運営したり、団地内の清掃や消防団なども手伝う他、畑で低農薬野菜を育ててカフェで地域の方に提供したり、地域の飲食店に販売することで部の運営資金に充てるなど、サッカーの練習と学業に加え、様々な地域交流の取り組みを行っています。
この記事では、本取り組みの背景にあった地域課題について触れていきます。
SITUATION自治会が抱えていた課題
竹山団地は1971年に竣工した大規模公社住宅で、135棟、総戸数約2800戸のほとんどが分譲住宅です。平均年齢は66歳。横浜市緑区の平均年齢が47歳であることを見ると、地域の中でも高齢化が特に進んでいる地域といえるでしょう。
高齢化に伴い、健康指標が悪化し、大規模利便施設や商店の撤退から空き物件が増えた結果、利便性やエリアとしての魅力が低下するだけでなく、コミュニティも希薄になることが容易に予想出来る状況となっていました。本取り組みに先立って神奈川大学が実施したアンケート調査によると、64歳までの方の約40%が「身体的・精神的に不健康状態」と回答、また、65歳以上の46%の方が「社会的孤立を感じる」と回答しています。
このような状況を大きな課題ととらえる有志メンバーが集い、「竹山未来先取り倶楽部」を結成。竹山連合自治会を中心に全6500世帯にアンケート調査を行い、公社や病院も交えてディスカッションを始めました。
「2050年には、全国すべてが竹山のようになる。竹山には、未来社会が広がっているに違いない。その中で我々がアクションを起こしていくことには大きな意義がある」
そう意気込み、活動を続けるメンバーに舞い込んできたのが、神奈川県公社を介した神奈川大学サッカー部との出会いだったのです。
「サッカー部と聞いてこれはしめた!と思った。かつて消防署の指揮官を10年以上やっていたが、部下の中でもサッカー部出身者は優秀。サッカーで活躍するには、優れた心肺能力はもとより、抜群のチームワーク力が必要となる。新人として来てくれて一緒にやれば、間違いなく活躍してくれるだろうと、一も二もなく賛成した」と、自治会長の吉川勝さんは当時を振り返ります。
PROBLEM神奈川県公社が抱えていた課題
一方、竹山団地を所有する神奈川県公社は、団地特有の課題を抱えていました。少子高齢化や老築化による過疎化が進み、2023年には人口が最盛期の4割程度となります。魚屋さんが撤退し、銀行がATMのみになるなど、遊休資産が増え、「団地の空洞化」が進んでいました。
神奈川県公社は、よくある「建物を作って終わり」ではなく、その後も長年にわたり住民と交流しながら地域を見守ってきました。
地域再生を行うにしても、企業やデベロッパーが勝手にやりたいことをやって、住民をないがしろにすると上手く行きません。住人の方たちを巻き込みながら、関わる人それぞれが納得し、相手を受け入れられる形でこの社会課題を乗り越えていくにはどうすればよいか。団地再生や地域連携を担当する水上弘二さんは頭を悩ませていました。
そんなタイミングで、神奈川大学サッカー部の大森酉三郎監督を、共通の知り合いであるNPO法人西湘をあそぶ会の原大祐さんから紹介されます。話を聞く中で、大森監督の要望に合致する団地は、一定の数の住民がいて、地域がしっかり機能し、コンテンツがある竹山団地に他ならないと考えるようになりました。
TO BE CONTINUED【後編へ】神奈川大学サッカー部、大森監督の挑戦
神奈川大学サッカー部大森監督は、サッカーを通した人材育成の場として竹山団地に可能性を見出します。後編では、その具体的な取り組みや今後の展望をご紹介します。