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高齢化に悩む竹山団地と神奈川大学サッカー部による地域再生の挑戦(後編)

2023年11月30日

高齢化に悩む竹山団地と神奈川大学サッカー部による地域再生の挑戦(後編)

横浜市緑区の地域と神奈川大学サッカー部、神奈川県住宅供給公社が手を取り合った「官民共創」による地域再生の挑戦、「竹山プロジェクト」。この記事では、神奈川大学サッカー部大森監督の、この取り組みにかける想いを伺いました。

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CHALLENGE神奈川大学サッカー部、大森監督の挑戦

神奈川大学サッカー部大森監督は、これまでの様々な経験から、全国上位レベルのアスリートがもつべきスキルは、地域活動を円滑に進める「社会的スキル」と重なる部分が多いと考えていました。

それらの社会的スキルとは、

  1. 非言語コミュニケーションスキル(アイコンタクト、声のトーン)
  2. 交友関係を築くスキル(挨拶、質問応答など)
  3. 相手と仲良くなるスキル(感謝の伝え方、謝り方)
  4. 問題解決スキル(交渉、他者との協働など)

の4つです。

竹山団地という社会の中で、学生たちが生活に密着した様々な地域活動を通し、この地域が更に良い循環を生み出す一助となることを目指しています。

それが、これからの社会に必要される人材育成であり、そういった活動を通してチームとして強くなることができるはずだ。与えられた良い環境の中で「受け身」で過ごすのではなく、自らが「自発的」に取り組み、経験を重ねることで、サッカーを通した人材育成の一環とできるのではないかと大森監督は考え、そういった活動ができる場所を探していました。

神奈川大学の建学の精神のひとつである「中正堅実」な人材育成に地域貢献は親和性が高く、それをサッカー部の活動と連動した取り組みにできないかと考えていたのです。

 

団地も県住宅供給公社も課題を抱え、それに対して関心を持っているサッカー部。しかし、思いを共有できたとして、この3者は一体、どのようにして出会うことができたのでしょうか。そのハブを果たしたのが、共通の知人であるNPO法人西湘をあそぶ会の原大祐さんです。

原さんがいなければ、このプロジェクトは生まれていなかったかもしれません。それくらいハブが果たす役割は大きいといえます。

 

 

EXPERIENCEスマホ教室をきっかけに起きた変化

竹山団地中央のバス停を降りると、すぐ近くに掲示板があります。そこには、神奈川大学サッカー部による取組み紹介のチラシが掲示されていました。中でも目を引いたのが、「神大サッカー部応援バスツアー」です。

これは、学生たちが実施する「スマホ教室」に参加した女性たちの声から生まれた企画です。「スマホ教室をやっていると、女性がみんなきれいになっていくんですよ」と自治会のメンバーは話しました。学生自身も、試合の結果を楽しみに待ってくれている地域の方の存在に支えられていると言います。

「学生たちが引っ越してくる」。そう聞いた住民の方から、「どこで学生と話せるのか」という問い合わせが来る中で生まれた“はじめの一歩”となったのが、竹山未来先取り倶楽部が主催する、学生による「スマホ教室」でした。

※スマホ教室から派生したサッカー部応援バスツアー

 

CO-CREATION地域で頼られる存在に

部員による活動の対象は、高齢者だけにとどまりません。竹山小学校の「宿題をやって来ない子どもたちの学力低下」という課題に対して、学生たちが「宿題応援団」として学習支援に加わりました。竹山連合自治会から依頼を受け、介護予防教室のあと、場所を2時間開放して、夏休みの宿題を見てあげる時間を設けたのです。

それを見た他の住民が「うちの孫が、読書感想文が書けないといっている。ここに来たら教えてもらえるか」と訪ねてきたり、夏休みが終わっても「ここで宿題をやってもいいですか」と子どもたちが集まったりするようになりました。

試合があって部員たちが来られない日に、涙を流して残念がる子どもたちもいたそうで、「学生が来ないことに、子どもたちがこれほどにまでショックを受けるのか」と自治会の方が驚いたといいます。「大掃除をやるから一緒においでよ」という学生からの声かけで、小学生が地域の大掃除に参加するようになるなど、多世代に交流が広がりつつあります。

 

また、どの地域でも担い手不足が課題として挙げられている地域消防団ですが、竹山では7名の学生が学生消防団員として参加しました。更に25名が入団を希望したが、定員オーバーのため、1年生は4年生が退団したあとに入団させる事になっているそうです。地域の清掃行事でも、「学生はまだか」とお年寄りたちが集合時間の前から待ち構えているといいます。

 

 

FUTURE竹山プロジェクトが目指すこと

神奈川大学サッカー部は、神奈川県公社のリードのもと、自治会と共創する次なる挑戦として、国交省補助事業による、空き物件を活用した2つのプロジェクトをサポートしています。

ひとつは、地域住民が活用できる低酸素ジムの導入です。1時間の運動が難しい方が、同等の運動の成果を15分で出せる、健康指標の低さの解消を目指す取り組みです。地域交流スペースで語り合い、運動し、QOLを高めて健康増進ができればという思いで、2024年5月にオープンを予定しています。

 

もう一つが、銀行跡地をリノベーションした「官民共創」による多世代交流拠点づくりです。ここでは、介護予防・生活支援拠点、スマホ教室、カフェ・コワーキング・イベントスペースの運営、学習支援・スポーツ支援などを展開していく予定です。

横浜市、企業、竹山小学校など、様々なプレイヤーとの共創にて進められており、神奈川大学建築学部、人間科学部、社会連携センターも巻き込み、大学としても、サッカー部を超えた取組みへと広がっています。

 

竹山団地は「水と緑の共生」というコンセプトで、自然との調和を目指して建築され、2021年にはDOCOMOMO Japanによる「日本におけるモダン・ムーブメントの建築250選」に選ばれるなど、後世に残していく価値のある素晴らしい建築と言われています。

水辺に面した銀行跡地が、どのような場所に生まれ変わり、この竹山プロジェクトに彩りを添えるか、今後の展開が楽しみです。