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伴走支援の本質とは?対話から始まる中小企業の変革|「中小企業伴走支援フォーラム2025 in KANSAI」イベントレポート

2025年03月26日

伴走支援の本質とは?対話から始まる中小企業の変革|「中小企業伴走支援フォーラム2025 in KANSAI」イベントレポート

2025年3月10日(月)、近畿経済産業局が主催する「中小企業伴走支援フォーラム2025 in KANSAI」が開催されました。本フォーラムのテーマは『「伴走支援」が生み出す価値とは何か。』中小企業が激動する経営環境を乗り越えていく上で注目される「伴走支援」の手法について、その本質的な価値や在り方を探る機会です。 実際に伴走支援を受けた経営者をはじめ、支援機関の担当者、行政担当者など多様な登壇者が体験談や視点を共有し、テーマを深掘りしました。 この記事では、当日に行われた各セッションの内容や登壇者のコメント、そして全体を通じて得られた洞察をまとめます。

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目次

Purpose何のために、伴走支援を行うのか?

DXやGX、人口減少、コロナ禍など、近年の中小企業を取り巻く環境は先行きが見通しづらく、変化も速い時代に突入しています。その中で国や各種支援機関が重要視しているのが、企業に寄り添い、課題解決プロセスをともに走りながら支える「伴走支援」です。

伴走支援は言わずもがな、企業経営の持続性を高める目的に行われるものですが、本フォーラムの基調講演では、もう一歩踏み込んだ「目的」が共有されました。

登壇した中小企業庁経営支援部 経営力再構築伴走支援推進室長 二宮健晴氏は、伴走支援の目的を「企業の自己変革力を高めること」と述べます。

有識者による助成金案内やコンサルティングなど「都度、答えを提供すること」にとどまらず、「答えは経営者自身の中にある」との前提で関わりを深め、経営者自身が本質的な課題を突き止め行動できるよう促す。これこそが経営の真の持続性につながると主張し、参加者の納得を得ていました。

 

 

答えを提供することが「ティーチング型」である一方で、傾聴と対話で相手の内発的動機を引き出すのが「コーチング型」です。これからの伴走支援の在り方とは、どちらも行き来しながら企業を支えることと言えるでしょう。

そんな前提(伴走支援の目的)が共有されたところで、実際に伴走支援を受け経営状況を立て直した経験を持つ経営者3名のセッションに移りました。

 

 

Session1セッション1:企業の視点から捉える「伴走」の意義と求める「成果」とは?

登壇した3名は、いずれも事業承継や経営危機を機に外部支援者と二人三脚で再生・成長を果たした事例を持っています。共通して挙げられたキーワードは、「経営者の孤独感」や「疑心暗鬼」。経営が苦しい時期には人が離れていく経験がある一方で、本気で寄り添ってくれる支援者が現れたときに大きく前進できたと言います。

ここからは、セッションで語られた具体的なエピソードを交えて、企業視点から見た伴走支援の意義や求める成果を紐解いていきます。

 

 

登壇者(五十音順)

青木 理 氏

 

株式会社アオキ(大阪府東大阪市)代表取締役。2001年株式会社アオキ入社。2006年専務取締役を経て2013年より現職。2014年近畿大学医工連携ものづくりアドバイザー、2018年関西経済同友会中堅企業委員会 副委員長に任命。2019年より一般財団法人ものづくり医療コンソーシアム理事に就任。

岡村 充泰 氏

 

株式会社ウエダ本社(京都府京都市)代表取締役。1963年京都市生まれ。1986年に瀧定株式会社に入社し、1994年に独立。イタリア生地の輸入業務と日本企業の営業代行を行う。2000年から家業のウエダ本社の改革に着手し、人にスポットを当て、人の個性、多様性を生かした“働く環境の総合商社”としての転換を図り6年で無借金に。現在は地域商社として地域の人や技術と外部の知恵を掛け合わせて価値を創出。2008年には創業70周年を記念し価値観の変革を訴える京都流議定書を主宰。15年間ソーシャルイノベーターの登竜門として存在。

井上 大輔 氏

 

株式会社WELLZ UNITED/井上株式会社(京都市福知山市)代表取締役。大学を卒業後、イギリス留学、海外ホテル勤務を経て29歳で3代目 井上株式会社 代表取締役に就任。就任後、幾多の社内改革に社員と共に取り組み、V字回復を果たす。2021年ホールディング会社である株式会社WELLZ UNITEDを設立。経営理念「私達は、毎日がちゃんと幸せで、成長するいい会社を創ります」を体現すべく、「信頼資本経営」をテーマに様々な取組を展開。

 

モデレーター:近畿経済産業局 中小企業政策調査課 調査分析係長 沼本 和輝 氏

 


 

ーー企業経営は業績が良いとき、芳しくないときなど「フェーズ」があります。伴走支援者の種類や、その在り方はフェーズごとに異なるのではないでしょうか?

 

 

井上氏:これだけ変化の激しい時代の中で経営をしていると、もちろん良いときもあれば悪いときもあります。伴走支援も含めてフェーズごとで必要資源は違います。

私は2003年に借入金20億、債務超過10億円の会社を事業承継しました。その状態から「私たちは、毎日がちゃんと幸せで、成長するいい会社を創ります。」を理念に掲げて組織風土や体制を見直し、奔走しました。その結果、2018年には実質無借金になり、京都経営品質優秀賞をいただけるまでになりました。その間には、金融機関や京都市、福知山市など、さまざまな伴走支援者の皆さんにお世話になりました。

 

ーー定期的に訪問をする支援者はいましたか?

井上氏:訪問も含めてコミュニケーションや情報交換の頻度が高い支援者とは良好な関係が築けています。たとえ担当者が変わっても、その機関や部署が持つビジョンがぶれずに引き継がれていればコミュニケーションも途切れません。

企業、行政、金融機関など、それぞれの組織自体の目的は異なりますが、上位概念として「この地域を良くしたい」のような共通のビジョンがあると深い関係性を築けると思います。

 

 

青木氏:関係が続きやすいのは「一緒に何とかしよう」と、ある意味ウェットな姿勢で向き合ってくれる伴走支援者ですね。当社も一時期業績不振のときがありましたが、会社が落ち目のときには不思議なもので、人が周りからサーっといなくなります。

経営者は孤独なので、一人でもがきながら必死に考えるわけですが、目の前の喫緊の課題にも対処しながらだと考えがまとまりません。そんな中、当社に伴走した方は何十回と私の壁打ち相手を務めてくださいました。

対話相手がいるだけで、経営者の思考や気持ちは整理されていきます。双方向のコミュニケーションを通して、当社の強みの再確認や社会で役立つための立ち位置が明確になり、事業拡大にもつなげることができました。

 

ーー「共通のビジョン」や「経営者と関わり続ける姿勢」など、伴走支援者の熱量が結果を分ける分水嶺のように感じます。

 

 

岡村氏:経営が厳しいフェーズでは、経営者自身が周囲に対して疑心暗鬼になります。私も井上社長と同様、母方の祖父が創業した会社を経営危機の状態で引き継ぎました。改革をしようにも内部からの強烈な反発に遭い、四面楚歌、八方塞がりの状況が続き、「誰も信用できない」と思うところまで追い込まれました。

そんな折、京都信用金庫の方が飛び込みで当社に訪れたので事情をお話しすると、「債務を全て肩代わりする」と支援を引き受けてくれたのです。これにはとても恩義を感じました。かけていただいた恩にしっかりお応えするために、事業計画は遅延することなく、計画通りに実行しました。

経営の現場には組織内外の人との力関係や感情論、予期せぬ外部環境の変化など、さまざまな定数・変数があります。机上のセオリー通りにはなかなか事が運びません。そういった「経営のリアル」を理解した上で熱量高く関わってくださる支援者には、多くの経営者が心を開くと思います。

 

ーー近畿経済産業局では、伴走支援の成果を、「事業者の満足度」「社会的有意性」「伴走者の達成感」のスリーサークルの重なりと捉えています。経営者の皆さんは成果がどのようなものであるとお考えですか?

 

 

井上氏:事業者には、それぞれ経営の目的や社会的責任があります。これらを果たすことに対しての伴走支援を求めています。そのプロセスでは、お互いオープンに対話のキャッチボールをするからこその気付きがあります。

経営者一人だけでは行き詰まるようなことも、支援者とともに考えれば事態を冷静に俯瞰することができ、適切な経営判断につながるのではないでしょうか。そのプロセスや結果をオープンにすれば、同じ課題を抱える事業者に有益な情報になると思います。

 

青木氏:私の場合は至ってシンプルで、経営者も伴走支援者も、胸襟を開いて関わればひとりでに伴走や共創が進むのではないかと考えています。「こういうことを実現したい」と素直に分かち合うことです。そうすれば馬が合う人は巻き込まれていきますし、興味のない人は去ります。

伴走支援者の皆さんには、コミュニケーションスキルや仕組み、能力などに固執しないでいただきたいです。力量が十分でなければ務まらないと考える方もいるかもしれませんが、相手に深い興味関心を持っているかの方が重要です。経営者と関わり続けることで伴走スキルが磨かれると捉えていただきたいですね。

 

岡村氏:当社も地方の中小企業を伴走支援する事業を行っていますが、三方良しを成果とするところは同じ考え方です。順番は「相手を良くすること」からです。

中小企業は大企業に比べると特徴がなく平凡と言われたりしますが、そんなことはありません。磨けば光るところは必ずあります。日本の99.7%を占める中小企業のマインドが変われば日本は変わると思います。


ーー示唆に富んだお話をありがとうございました。

 

 

Session2セッション2:伴走支援を通じて、改めて支援の在り方を問い直す

後半のセッションでは、実際に伴走支援を提供する側からの声が共有されました。支援者が携わるのは、人材不足や資金繰りなど多くの中小企業に共通する課題から、個社固有の課題までさまざまです。

解決までのアプローチも多様に考えられる中、「正解はない」と体系化を諦めるのではなく、「正解は複数ある」と捉え、各プロセスのアレンジや支援者同士の連携による相互補完、事例・ノウハウの共有が求められるのではないでしょうか。

このセッションには、中小企業基盤整備機構、京都北都信用金庫、よろず支援拠点の異なる組織の支援者が登壇し、それぞれの視点から「伴走支援の在り方」を語りました。

 

登壇者(五十音順)

吉岡 美和 氏

 

京都北都信用金庫 常勤理事。2020年6月に常勤理事に就任。融資部部長・営業推進部部長・リスク統括部長を経て、2024年7月から、地域創生事業部・リスク統括部担当理事に就任。地域創生事業部では、本業支援の重要性が高まる中、同金庫のミッションである「お客さまのことを知り尽くし、事業の成長に向けたイノベーションの創出やライフプランをお手伝いすることで、お客さまの夢や思い描かれる将来像を一緒に実現する。」を具体化すべく、行政・専門機関とも連携を図り、地域事業者の課題解決への提案とともに、地域のコミュニティの場の提供に取り組んでいる。最近は、販路拡大支援に加え、副業兼業人材紹介・事業承継へ支援範囲を拡大中。

國本 真之介 氏

 

中小企業基盤整備機構 近畿本部 企業支援課長。1976年北陸生まれ、北陸育ち。就職氷河期の1999年に大学を卒業後、大手金融機関に就職し、大阪で社会人生活をスタート。2005年に中小企業基盤整備機構に転身し、本部(東京)の各部署のほか、北陸本部(金沢)勤務などを経て、2023年より現職。北陸本部勤務時代には、約100社のハンズオン支援(伴走支援)を担当。現在は、来年度の国の主要経済政策となる飛躍的成長支援(100億企業創出支援)の開始に向けた準備も手掛ける。大阪出身の妻の影響で、家庭内の公用語は河内弁。

津賀 弘光 氏

 

兵庫県よろず支援拠点 コーディネーター。70年続く飲食店の長男として生まれ、自宅兼店舗で親の仕事を手伝うことが私生活という環境で育つ。中学から新聞配達で自ら資金を稼ぎ、学卒後は日本政策金融公庫やベンチャーキャピタルに勤め、外部支援家として、中小企業経営に携わる。 フリーランスになり15年。公的機関の窓口経営相談業務として延べ4,000件以上の相談実績があり、数多くのビジネスモデルに触れてきたほか、自身も経営陣の一角として複数社にコミットして、経営者と一緒に内部からビジネスモデルを構築。

 

 

モデレーター:近畿経済産業局 中小企業政策調査課 調査分析係長 沼本 和輝氏

 


 

ーー中小企業に対して、それぞれの組織がどのような支援をしているかをお話しください。

 

 

吉岡氏:京都北都信用金庫では「地域活性化の実現」を最重要課題に設定し、営業エリアの事業者の経営課題解決を支援しています。特に近年は多くの企業で人手不足が深刻な問題です。そんな中でもスピーディーな経営判断を行うために、高度スキルを持つ外部人材の活用の必要性が高まっています。そこで当金庫では、営業係が窓口となり取引先の経営課題をヒアリングし、ニーズに合った外部人材(副業人材)のマッチングやアフターフォローを行う伴走支援を実施しています。


國本氏:私たち中小企業基盤整備機構では、中小企業の社内変革プロジェクトにアドバイザーを派遣し、ハンズオンで経営課題を解決する支援を実施しています。支援先の企業が将来的に自立自走することを重要視しており、社員の皆さん中心のプロジェクト推進体制にて「自分ごと化」ができるような働きかけを行うのが特徴です。

 

津賀氏:私は2015年から兵庫県よろず支援拠点の相談業務に従事し、主に小規模事業者の経営支援を行っています。小規模事業者の場合、早く損益分岐点を超えないと事業の継続性が危ぶまれるため、スピーディーかつ細やかな支援が求められます。事業者自身が答えを見つけられるよう働きかけつつ、相談ごとの回答はタイミングよく行うように努めています。

 


ーーセッション1で登壇した経営者の皆さんからは、経営者と伴走支援者の深い関わりがあってこそ成果に結びつくのではないか、との意見が上がりました。実際に支援をする上で、どのようなコミュニケーションを意識されていますか?

 

 

國本氏: 私が支援を始める際には、最初から経営課題の話を切り出すことはほとんどありません。まずは雑談を通じて、経営者の方との関係構築に力を入れています。心を開いていただけるよう、こちらから積極的に話すより、社長のお話に耳を傾けることを大切にしています。実際、訪問すると3時間ほどお邪魔することもあり、そのうちの前半は雑談に終始することもしばしばです。2時間目くらいになってようやく社長がキーワードとなる課題を口にされる、ということも珍しくありません。

こうしたやり取りを重ねるうちに、経営者の立場や社内の状況まで含めた内情を詳しく聞かせていただけるようになります。それが本質的な課題を見極める重要な手がかりとなります。

 

吉岡氏:私も同じく、経営者の方とのコミュニケーションの量と頻度を増やし、少しずつ課題を解きほぐしていく姿勢が重要だと考えています。当金庫の営業担当にもそのように伝えています。どのような商品を扱っているのか、社長のご趣味は何か、大切にしている思いは、など、まずは興味関心を持って企業や社長のお話を伺うところから始めます。

コロナ禍の影響で企業との接点の持ち方自体が変化し、しばらくお会いできない時期が続いたために、距離を縮めるまで苦労したケースもありました。そのため、改めて「現状把握」や「課題の抽出」といった伴走支援のセオリーをしっかりなぞった上で、いわば右腕のような立ち位置で深い話を伺えるように心がけています。

 

津賀氏:私が経営者の方の支援をするときには、柔軟かつ細やかなコミュニケーションを大切にしています。やりとりにかける時間だけでなく、頻度やタイミングも重要です。機会を失わないように、経営者が「いま聞きたい」「いま話したい」と思うタイミングにできるだけ応えるようにしています。

また、私自身の経験をお話しすることも多いです。実は実家が飲食店を営んでおり、母が毎月「今月の給料、どうやって払おう・・・」と頭を抱えていた姿を間近で見ていました。その経験から、経営者が抱える悩みや苦労を、身をもって理解しているつもりです。こうした背景を素直にお伝えすると「この人は経営の大変さを理解しているのだな」と、心を開いていただけることが多いと実感しています。

経営者の方と深く関わるには、こちらの姿勢や経験をきちんと示しながら、一緒に課題を探り、解決へ向かう道筋を考えていくことが大切だと思います。

 

 

ーー伴走支援の重要性が増す一方で、その難しさに直面するケースも多いと聞きます。実際に支援する立場から見て、これからの伴走支援における課題の本質はどこにあるとお考えですか?

 

 

國本氏:ハンズオンの伴走支援は、結果的に支援先から頼られすぎてしまうリスクがあると思っています。将来的な自立自走を叶えるには、経営者や社員の皆さんが主体的に行動できるようなアプローチが重要です。ですから成果が目に見えてくるまでに、短くても半年から1年は時間がかかります。

このように、長期的に企業の伴走支援を担える人材は多くありません。育成にも苦労しています。支援者一人ひとりが自分の言葉で質問し、経営者にしっかり寄り添いながらも、自立を促せる人材になることが必要だと感じます。


吉岡氏:今の営業担当者はとにかく忙しく、社長とじっくり話をする余裕がありません。また、聞くべきポイントはまとめられても、“余白”の部分での雑談や、何気ない会話を通じた本音の引き出しが苦手というケースもあるようです。

それに加えて、他の部門から「伴走支援ではいったい何をしているの?」「それは収益にどうつながるの?」と疑問を持たれがちなのも事実です。しかし、伴走支援は表面的な数字や短期的な成果だけでは測れない部分が多く、こうした“余白”のコミュニケーションこそが、本質的な経営課題を発見するきっかけになります。このようなことを支援者自身や組織が理解しなければなりません。

 

 

津賀氏:支援先の社長にたくさん怒られたり、いろいろな提案をしては失敗したりと、試行錯誤を繰り返す経験も重要ではないでしょうか。こうした過程を通じて、経営者との間で信頼関係が育まれ、伴走支援の意義を双方が強く感じられるのではないかと思います。

ただし、組織的に失敗を許容できなければ、こうしたアプローチは難しいです。伴走支援には長期的に企業と向き合う姿勢が必要であり、その過程で支援者自身も大きく成長する可能性を秘めています。そうした支援の場や環境をどうデザインしていくかが、これからの伴走支援における鍵なのではないでしょうか。


ーー伴走支援の現場の最前線におられる皆さんならではのお話をありがとうございました。

 

 

Dialogue長期的・深層的な対話が伴走支援の礎に

 

今回のフォーラムで特に注目されたのは、経営者と支援者が長期的・深層的な対話を重ねる伴走支援の在り方です。

単にノウハウを与えるのではなく、経営者の悩みや課題をともに掘り下げることで信頼関係が生まれます。支援のプロセスで行われる傾聴と対話によって経営者は孤立から解放され、真の課題に向き合えるようになり、組織全体の変革力を高める基盤が形成されていきます。また、支援する側にとっても、試行錯誤や失敗を含むプロセスそのものが学びと成長の源になり得ます。

こうした伴走支援が生み出す価値は、単に企業の課題解決にとどまらず、企業と支援者が双方に成長し合う関係を築き、その連鎖が地域や社会全体の活力へとつながっていくと言えるでしょう。

 

フォーラムを終えた主催者・登壇者のコメント

主催:近畿経済産業局 (代表3名によるコメント)
地域連携推進課 地域開発企画係長 森川 大介 氏(左)
中小企業政策調査課 調査分析係長 沼本 和輝 氏(中)
カーボンニュートラル推進室 室長補佐 藤田 力 氏(右)

私たちのミッションは、中小企業にとって有益な政策立案につなげることです。そのためには、地域企業の実情をしっかりと把握する必要があります。

目まぐるしく変化する時代において、中小企業が抱える経営課題は複雑化しています。1〜2回のヒアリングだけでは本質を捉えきれないと感じています。昨今、伴走支援が注目されていますが、私たちはそれだけが唯一の手法ではないと考えます。大切なのは、相手を人として尊重し、興味を持って関わる「伴走支援的な姿勢」です。

まずは経営者の皆さんを理解し、深い関わり合いの中で本質的な課題を捉えることにより、多様な専門家との連携を含めた発展的な支援につながります。このような地道な取り組みが、企業の変革力を高める道だと考えています。

今回のフォーラムは、近畿経済産業局で伴走支援に取り組む部署の担当者が中心となり、部門横断的に結集したプロジェクトチームによる取組として開催しました。企業の本質的な課題に関与させていただく以上、支援機関側も常に変革力を高め、縦割りの対応や支援メニューの押し売りになっていないかどうかについてチェックする必要があることを肝に銘じて取り組んでいきたいと思います。

 

 

登壇者のコメント

 

株式会社アオキ 代表取締役 青木 理 氏
伴走支援者には、型どおりのコンサルティングではなく、経営者の気持ちに寄り添いながら、ともに“もがき”を乗り越えてほしい。そこから新たな展開や成長への道が拓けると感じています。

 

株式会社ウエダ本社 代表取締役 岡村 充泰 氏
その会社や社長個人のことをどれだけよく知ろうとしているか?興味を持って関わろうとしているか?伴走支援者に最初に求められるのは、そういった姿勢なのだと思います。

 

株式会社WELLZ UNITED/井上株式会社 代表取締役 井上 大輔 氏
人口減少時代に突入した企業経営は、旧来の分業型からリソースを出しあう共創型へ移行しています。今回のようなイベントは、伴走・共創のきっかけを得る良い機会だと思います。

 

京都北都信用金庫 常勤理事 吉岡 美和 氏
伴走支援者には、危機的状況の企業にも寄り添う胆力が必要です。金融支援と本業支援を分けて考えず、包括的な視点で目的達成のための道筋を作れればと思います。

 

中小企業基盤整備機構 近畿本部 企業支援課長 國本 真之介 氏
経営者自身が腹落ちするまで寄り添い、自ら動く力を引き出す。その一連のプロセスを一緒に設計し、社員の思いも巻き込みながら進めるのがハンズオン支援の醍醐味です。

 

兵庫県よろず支援拠点 コーディネーター 津賀 弘光 氏
社員には1on1のような対話の機会が与えられますが、社長にはそれがないことも多いです。経営者の「モヤモヤ」の雲を取り払うことが伴走支援者の役割なのだと思います。