
2026年03月13日
【前編】教育×企業×自治体の共創へ。「出会う場」で見えた「教育の共助」の可能性 |教育の共助に係るネットワーキングイベントイベントレポート
教育の共助に係るネットワークイベント開催レポート【前編】
2026年2月24日、大阪・淀屋橋のMUIC Kansaiにおいて、近畿経済産業局主催の教育の共助に係るネットワークイベントが開催されました。春の暖かさを感じる中、近畿圏を中心に学校、自治体、民間企業などに所属する約80名が参加しました。
開会にあたり、近畿経済産業局の谷原部長は、学校の先生からは「企業と出会う場が少ない」、企業側からも「教育現場とつながる機会が少ない」という声があることに触れ、本イベントが教育と社会をつなぐ出会いの場になることへの期待を述べました。またMUIC Kansaiの渡邉さんからは共創拠点としての役割が紹介され、近畿経済産業局の三小田さんからは教育の共助を広げていく意義が語られました。
CONTENTS
目次
🔳Prologue 教育の共助が求められる背景
🔳Keynote 京丹後市が挑む官民共創の教育改革
🔳Pitch Session 自治体・企業・学校による取り組み
🔳Networking 教育共創を広げる対話
🔳Prologue
近年、教育を取り巻く環境は大きく変化しています。共働き世帯の増加や家庭環境の多様化、世帯間の経済格差の拡大などにより、家庭による「自助」と学校による「公助」だけでは、子どもたちの多様な学びを十分に支えきれない状況が生まれています。こうした背景のもと、学校や家庭だけに教育の役割を委ねるのではなく、地域社会や企業など多様な主体が関わりながら子どもたちの学びを支えていく「教育の共助」という考え方が注目されています。公共と民間がそれぞれの強みやリソースを持ち寄り、共創によって教育環境をアップデートしていくことが求められているのです。
このような問題意識のもと、経済産業省では2023年度より「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」を立ち上げました。本研究会では、学校と企業、地域社会が連携しながら人材・知見・資金などの資源を循環させる仕組みづくりについて検討が進められてきました。子どもたちの学びの場を学校の中だけに閉じるのではなく、社会全体の知見や経験とつなげることで、新しい学びの可能性を広げていくことが期待されています。
こうした政策的な議論を実際の現場へとつなげていくため、近畿経済産業局では教育に関わる多様な主体が集まり、互いの取り組みを共有しながら連携の可能性を探る場としてネットワークイベントを企画しました。学校、自治体、企業などが垣根を越えて対話し、新たな共創のきっかけを生み出すことで、教育の共助を実践する具体的な取り組みを広げていくことを目指しています。

🔳Keynote
京丹後市が挑む「官民共創による教育改革」
基調講演では、官民共創による教育改革に取り組む京丹後市の実践が紹介されました。
京丹後市は人口減少や学校の小規模化といった地域課題に直面しており、教育環境のアップデートが求められています。こうした状況の中で同市は、総務省の「地域活性化起業人制度」を活用し、民間企業から外部人材を受け入れるなど、新しい教育づくりに取り組んでいます。
京丹後市教育委員会の上田さんは、「東京から最も遠い地から、世界に最も近い教育を」というビジョンを掲げ、教育改革を進めていることを紹介。民間企業の知見やネットワークを活用することで、教育委員会の取り組みの幅が広がり、企業や地域と連携した新たな教育活動が生まれているといいます。
続いて、元小学校教員でもある長砂さんは、外部人材の参画によって教育現場にも変化が生まれていると語りました。学校現場では前年度踏襲の文化が強く、新しい取り組みを進めることが難しい場合もありますが、外部の視点が入ることで会議の進め方や資料作成など業務の進め方にも変化が生まれたといいます。また、地域学習「丹後学」を探究型の学びへと進化させるなど、学習内容そのもののアップデートにも取り組んでいます。
ICT教育を担当する吉村さんは、教育DXの取り組みについて説明。Google Workspace for Educationを導入したことで、児童生徒が意見を共有したりする協働的な学びが広がっているといいます。「子どもたちが主体的に学び合う姿が教室で当たり前になりつつあります」と語り、ICTの活用による学習環境の変化を紹介しました。
PwCコンサルティング合同会社の髙篠さんは、総務省の地域活性化起業人制度を活用し、京丹後市教育委員会で活動した経験を紹介。自治体の取り組みでは、日々の業務に追われる中でも「何のために行うのか」という目的に立ち返ることが重要だと指摘しました。また、民間と行政では制度や意思決定のプロセスが異なるものの、「子どもたちのためにより良い教育環境をつくりたい」という思いは共通しているといいます。高篠さんは、官民共創を進めるうえで「互いの立場を尊重しながら対話を重ねることが重要だ」と語り、共創の可能性を示しました。
対談セッションでは、近畿経済産業局の三小田さんがモデレーターを務め、基調講演に続き、京丹後市教育委員会の上田さん、吉村さん、長砂さん、そして地域活性化起業人として京丹後市に参画している髙篠さんが登壇し、官民共創による教育改革について意見交換が行われました。
登壇者たちとの対話からは、官民が立場の違いを越えて対話を重ねることが、新しい教育づくりの鍵になることが示されました。

(後編に続く)

