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【官民共創で生まれた価値】介護施設の夜間オンコール代行で、職員の負担軽減と救急搬送回数の減少を実現

2023年10月13日

【官民共創で生まれた価値】介護施設の夜間オンコール代行で、職員の負担軽減と救急搬送回数の減少を実現

この記事では、2021年11月〜2022年9月に福岡県北九州市で行われた、官民共創プロジェクトについて取り上げます。当プロジェクトの目的は、医師が常駐しない高齢者施設において、現場スタッフの夜間緊急対応の負荷を軽減することです。ドクターメイト株式会社(以下、「ドクターメイト社」)の「夜間オンコール代行™サービス」を特別養護老人ホームに導入し、実証実験を元に「適切な夜間救急搬送モデル」を官民共創で確立していきました。プロジェクトの概要や、そこから生まれた価値についてご紹介します。

CONTENT
目次

INTRODUCTIONドクターメイト社とは

ドクターメイト社は、オンライン医療相談と夜間オンコール代行™で24時間365日、医療サービスを提供する企業です。

※オンコールとは:医師や看護師が常駐していない現場(介護施設等)において、緊急時にすぐ駆け付けられるよう待機する勤務形態のこと

介護施設等で利用者の体調に異変が生じた場合は、

施設からオンコール担当看護師へ呼び出し
オンコール担当看護師および施設職員が場合によっては救急車に同乗し病院に帯同

など、現場対応に大きな負担がかかります。


これを解決するのが、夜間オンコール代行™サービスです。

ドクターメイト社のオンコール代行™サービスは、現役看護師が365日夜間待機。オンコール担当看護師の負荷を減らすことができます。

また、適切な対応についてドクターメイト社所属の看護師に電話でアドバイスを受けることで、不要な救急搬送を無くすことにもつながります。結果、介護職員の負担も軽減されます。

 

 

PROBLEM北九州市が抱えていた課題

北九州市では、介護施設における「救急搬送帯同の負担」「オンコール対応の負担」という課題を抱えていました。

一方ドクターメイト社は、官民共創マッチングプラットフォーム「逆プロポ」にて、『「適切な夜間救急搬送モデル」を実現するために、地方自治体・病院・介護施設の3者で新しい仕組みづくりに挑戦したい。』というテーマで共創自治体を募っていました。

このテーマが北九州市が抱えている課題にマッチしたため、同市が手上げ。マッチングへと繋がりました。

 

 

PROJECT北九州市×ドクターメイト社のプロジェクト内容

今回のプロジェクトでは、ドクターメイト社の「夜間オンコール対応代行™サービス」を北九州市の特別養護老人ホーム17カ所に導入し、市が目指す地域医療介護連携の一部を担う「適切な夜間救急搬送モデル」の実証実験が行われました。

介護施設の夜間緊急対応における現場職員の負荷を軽減し、介護業務の効率化や質の維持・向上、現場職員の働きがいを高める「先進的介護」の実現の一端となるプロジェクトです。

プロジェクトの概要図(出典:北九州市)

 

【今回の共創でドクターメイト社が持ち寄ったもの】

  • 「夜間オンコール代行™サービス」の無償提供
  • 市や施設の担当者の状況に合わせた柔軟な対応や情報共有

 

【今回の共創で北九州市が持ち寄ったもの】

  • 北九州市が持っていた解像度の高い課題と、消防局・医師会など組織を横断した連絡調整
  • 実証実験に参加する高齢者施設の声を拾い上げ、ドクターメイト社にフィードバック

 

実証実験1ヶ月後の手ごたえ

実証実験を開始して1ヶ月後、ドクターメイト社からの中間報告によると、夜間オンコール代行™サービスの利用が12件、その内救急搬送されたのは1件でした。

残りの11件は、ドクターメイト社所属の看護師の電話アドバイスにて現場対応が行われ、解決に至ったとのことです。

 

 

OUTCOME官民共創で生まれた価値

今回のプロジェクトでは、「オンコール担当看護師および高齢者施設の職員の負担軽減と救急搬送回数の減少」という成果が生まれました。

また、実証実験に協力した各施設からも「夜間オンコール代行™があって助かった」「電話相談をするのにハードルが低くて良かった」「経過観察の件に対して継続的にフォローをしてくれた」等のポジティブな感想が届いたとのことです。民間サービスを活用することでの好循環が生まれたと推察できます。

北九州市では現在、市民が受けた医療・介護・健診の情報の一部をネットワークを通じて医療機関等で共有する、医療介護連携を進めています。

ここに今回の実証実験のデータが加わることで、より精度の高い分析ができるようになる可能性があるでしょう。

そして、何よりの価値とも言えるのが、北九州市とドクターメイト社双方が「同じ目的を共有し、目線の高さを合わせて共創する感覚」を掴んだことではないでしょうか。

プロジェクト終了に伴い、形式上、北九州市とドクターメイト社との契約も終了したとのことですが、北九州市は実証実験に協力した高齢者施設に対し、「良いものだと感じれば有料契約もできる」と選択肢を用意するとのことです。

ドクターメイト社は、この度のプロジェクトの経験を活かして、他の自治体にも展開可能なサービスへと改良を進めています。

 

 

AFTER行政サービスの「あるべき姿」を官民共創で具現化

最後に、このプロジェクトに自治体側から携わった、北九州市保健福祉局先進的介護システム推進室 堀江次長の考察・感想を紹介します。

「通常の役場の業務では経験できないようなことに取り組んでいますから、職員の目線は間違いなく上がっていると思います。

個人的には、ビジョンが同じ民間企業の方と対話することによって、自分の仕事がいわゆる「お役所仕事」でないと感じられたことは大きいです。発想は違うけれども、同じビジョンを見ている人たちが外の世界にいると実感できることは、役所の中では得難い経験だと思います。」

今回の北九州市とドクターメイト社のプロジェクトは、行政サービスの「あるべき姿」を官民共創により具現化した好事例と言えるのではないでしょうか。